『よっぽど根気がいる』
その工藤さんの言葉に僕は、コクリと大きく頷く。
「それは、わかります」
それからワインをもう一口飲み、ついでの様にまた溜め息をついた。
「ははは。なんだ、歩夢、お前、それで一人で悩んでるんだろう?
いいか? 求めすぎては駄目だ。
仕事だって家庭だってそうなんだよ。何だってそうだ。
与える事を惜しむな。
俺が思うに、男ってのはそうゆう生き物なんだ、情けないけどな。
求めすぎた途端に、破綻する」
「………」
僕は黙って、工藤さんの言葉に相槌を打っていた。
こんなに工藤さんが喋るのは、何だか珍しい。
さくらでいくら飲んで酔っていても、これほどまでに饒舌な工藤さんは見た事はなかった。
………
「歩太が壊れてしまったのだって、そうなんだよ」
歩太……
僕は、その名前にはやはり反応せずにはいられない。
「……工藤さんは、歩太がいなくなった原因を知ってるんですか?」
僕が恐る恐るそう言葉にすると、工藤さんはほんの少し、僅かだけれども、うむ、と頷いた。