「ね、ね、それより、今日さ、今日……
歩夢んとこ、行ってもいい?
彼氏がね、今日は遅くなるって言うの」


尚子は、綺麗にミルクティー色に染められた長い髪を片手で束ね、上目使いで僕の顔を覗き込む。

唇にはまだ、トマトソースがくっついている。


「尚子、昨日もウチに来たじゃんか」


僕がそう言うと、尚子は大袈裟に頬を膨らます。


「昨日は昨日でしょー、今日は今日ー。
昨日は急にキャバのお客さんのせいで、歩夢とゆっくりできなかったじゃあん!」