『アユニ』

そう
『二番目の歩太』


………


彼女はいつも独りぼっちだ。
しかもそれをいつも、自分から望んでいる。

何故なら、歩太がここにいないからだ。
ここにいない歩太を探すのには、媒体が必要だ。

媒体とは深く関わってはいけない。
何故なら歩太の影が薄れてしまうからだ。

彼女が必要としているのは、歩太の影を残した誰か、そしてこの部屋。
歩太の代わりにコーヒーを啜ってくれる相手。


だから僕を彼女は……

僕として必要とはしていないのだ。


………


「それで」


気が付いたら僕は、口を開いていた。


「それで、いつまでそうしているつもりなの?」


「……え?」


僕の言葉に、野中七海の大きな目が更に大きく見開かれる。

長い睫毛が、黒く美しい。