「……そっか……」


僕はただ一言、そう小さく呟く。

『そっか、よかったね』

いつもの僕ならば、そう付け足したかもしれない。

けれども今何故か、『よかったね』などと言う気分にはなれなかった。


………


ブルーのノートを眺めながら、ふんわりと微笑む彼女の顔を、見るでもなく僕は見る。


……いつも。

いつだって野中七海は、歩太の事ばかりだ。

僕とここで過ごしながら、いつも歩太の影を探している。

このアパートに、このキッチンに。
このダイニングテーブルに、あのコーヒーメーカーに。


……そして僕に。