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野中七海が帰って来たのは、それからしばらく後だった。


「コンビニの公衆電話からね、工藤さんに電話していたの。今日は、さくらお休みでしょう? 工藤さんに、例の秘密のバー、連れて行ってもらおうと思って」


彼女はそう言って笑って、意外にもサッパリとした顔付きだった。


「今日?」


「そうよ、今日。夕食もご馳走して下さるって」


それから野中七海は、テーブルの後片付けを始める。
誰にも口を付けられなかったコーヒーは、野中七海によって全部流されてしまった。

僕は、彼女の入れてくれたコーヒーを流すのを躊躇ったので、テーブルの上にそのままにしておいた。
言い訳がましいので、決して言葉にはしないのだけれど。