「今日ね、本当は。歩夢にさ……一緒に、病院に行ってほしいって、お願いしようと思って来たんだよね」


「………」


……病院?


そう言えば尚子は……
お腹の中の子供を、いったいどうするつもりだったのだろうか。

産むつもりなのか……
それとも……

それは、決して声にしてはいけない疑問の様に思えた。



「実はね、子供……どうしようか、迷ってたの。さっきまでずっと」


尚子は、無意識にだろうか意識的にだろうか、自分の手の平で大きくお腹を擦り始める。

その仕草は、子供の誕生を心待ちにしている母親そのものだった。


「先生に、お父さんと相談して、また来て下さいって言われた時に、真っ先に歩夢の顔が浮かんだんだよね。
……不思議だけどさ、彼氏の顔とか浮かぶもんだよね、普通。
……だって、歩夢の子じゃないんだからさ」