「新垣先生、携帯鳴ってるよ」





喜多先生が、ソファに置きっぱなしだった俺の携帯を指差した。






もしかして!!



俺は急いで電話を取った。






「もしもし」





直のお母さんからだった。





陣痛が始まったみたいだから、産婦人科に向かっていると。




タクシーの中だった。



直の声がかすかに聞こえる。




とても苦しそうな声だった。




まだ大丈夫だから、急がなくていいと言われた。







「俺、ホームルーム終わったらすぐ失礼します!」




「おう!頑張って、背中さすってやれよ」





喜多先生に思い切り背中を叩かれた。






「はい!!また連絡します」








落ち着け。


落ち着くんだ。







自分にそう言い聞かせながら、教室へと向かった。







神様。




どうか、無事に赤ちゃんが生まれますように。




直も空も、元気でありますように。