(…いたい)


滲んだ視界に映る、カーテンレールにかかったパーカー。

寒い冬に着せられた、あの毛羽だった感触。匂いさえ蘇るようで、布団の匂いも鼻の奥を刺して、それは紛れもなく彼の匂いで。

なんだかもう、どうしようもない。


(……そっか)


ぽつり、と涙が落ちる。

ぽつりと落ちて、布団の中に消えていく。

冷たい。でもきっと明日、乾いたら、もう跡形も残らない。

残らないもの、残しちゃいけないもの、残っていたもの。


そっか。そっか。
そっかぁ。

とっくに終わってた。
とっくに過去だった。

なのに。



…まだ好き も、残ってた。