”結婚したらさぁ、どんな家がいい?”


運転しながら、彼が聞いた。

幸せそうな顔で、わたしに聞いた。


”一軒家がええかなぁ~。どんな色にする?カーテン”


そんなことを言われて、まだ早いよなんて笑って、彼がむくれて、また笑って。

でも頭の中では浮かんでた。

落ちついたアンティークな机、フワフワのリビングマット、飾られたお揃いのヘルメット、それからカーテン。


”どんな色にする?”


…浮かんだのは、水色だった。



「~っ!?」


ゴン!と音を立てたあたしの頭。

響く振動。急な寝返りをうった彼の腕から、転がり落ちていた。


「…いったぁ……」


眉間にシワを寄せながら、頭をさする。

向き直った彼の方。
寝返った背中。

気持ちよさそうな寝顔に並んだ鼻筋は、もう見えない。



わたし、は。



…好きだった。

すごく好きだった。


綺麗な鼻筋や、安心しきって眠る顔や、少しだけ開いた口元や、丸まった背筋や、ごつごつした、腕枕が。

痛い。痛い。思った以上の痛みに、生理的な涙が浮かぶ。