チクタクチクタク、時計の秒針の音が、どうしようもないほど耳につく。

昼間には気にならないのに、夜中にはどうして気になるんだろう。

とくに、一人だけ寝付けない、真夜中には。


(…やっちゃった、なぁ)


豆球のみの光の中、浮かぶ白い顔を間近で見ながら、考える。

久しぶりだなぁ。
こんな近くで見るのも。
こんなに長い時間見ているのも。


チクタク、チクタク。離れない音。

覚えていた音。まだ覚えていたんだと、ついさっき気づいた音。


…元彼と、寝てしまった。

布団からは、嗅ぎ覚えのある匂いがした。


別れたのは、もう半年以上前だった。
もう二度とここには来ないと思っていた。


(…なんか、そのまんまなんだな)


白けたような頭で、そんなことを思う。

そのまんま。布団の匂いだけじゃ、なくて。

積まれたCDも、カーテンレールに吊るされた、スポーツブランドのパーカーも。

すぐ間近にある、尖った鼻筋も。