…また、だ。また、忘れてる。


光景と、記憶がかぶる。

ケガとか、そういう痛いのにはめっぽう強いくせに、シャンプーの泡は苦手だった元岡。

本人いわく、泡が目に入ると、身動きができないらしい。

だから、元岡の必需品はタオルだった。それを笑ったら、顔面にシャワーをかけられて本気でむせた。この時も喧嘩になった。


必需品。そのくせ、元岡はしょっちゅうタオルを忘れた。

用意はするくせに、呆れるくらい、持って入るのを忘れる。

付き合ってた頃は、よくお風呂場からヘルプの声が聞こえたものだった。


"うわ!痛っ!!目ぇ入った!!"

「うわ!痛っ!!目ぇ入った!!」


頭に浮かんだセリフと、同じセリフが耳から入り込んで、ビクッと跳ねた。


…条件反射だった。

慌ててタオルを手の中に滑らせ、ドアを開けて、お風呂場に飛び込んで。

飛び込んで、そんで、


「………」
「………」


そん、で。


ぽっかり、丸い口が開く。

目の前には、目を丸くしたアイツ。元岡。全裸の。


「……っ!?」