カルヴィナは、苦々しく娘の名を呼んだ。

 そこには何て事を言いだすのだ、という想いがありありと込められている。
 それに堪えた様子も無く、ミルアは続けた。


「お忙しい地主様を煩わせるのは、気が引けます。もし、なんでしたら、こちらから迎えに行きますし、送り届けます」

「……オマエがか?」

「いいえ。村の誰かに頼みます。きっと厭わず、喜んで引き受けてくれる事でしょう」


 にんまりと笑う娘に、過剰に反応を示さないように、あくまで落ち着いて答えた。


「必要ないし、問題ない」


「はい。承知いたしました、地主様。だってよ、エイメ?」

「……。」


 カルヴィナは居心地悪そうに、身を竦めた。


「おまえは変に気を回しすぎだ。気に病まずともよい。わかったな?」



 そう確認すると、おずおずと首を縦に振った。

 今朝方のやり取りを、カルヴィナはずっと気に病んでいたらしいと判断する。

 なんて事だ。

 どうにも説明付かない想いが、胸を責め広げて占拠して行く―――。