それはロイドが導き出した結論と同じだった。
 ランシュは結論に至った経緯を語る。


「ゆうべ、あなたに機能停止を告げられて、オレはそれまで無縁になったと思っていた死と、初めて正面から向き合いました。この身体がなくなったら、オレの心はどこへ行ってしまうんだろう。人知れず滅びたオレの肉体と同じように、オレの存在も忘れ去られ、消えてしまうんだろうかと、そんな事を色々考えていると、無性に怖くなったんです。そして気付きました。二年前のオレも、同じように怖かったんだろうと。それまで覚悟していたつもりでいたけど、必死で何かに打ち込んで、目を逸らしていたんです。けれど、いざやる事を取り上げられて、それしか向き合うものがなくなった途端、怖くて堪らなくなったんだと思います。怖さを紛らわせるため、そして命を長らえさせる可能性を手に入れるために、この身体を作ったんです。オレの死に顔が幸せそうに笑っていたのは、夢を実現したからじゃない。もう一度人生の続きを歩む事が出来るからだったんです」

「おまえは、今も怖いんだろう?」


 ロイドが静かに問いかけると、ランシュは俯いた。


「怖いです。けれど逃げたら、ユイにもあなたにも二度と会えないし、この先もずっと逃げ続けなければならない。この世に誰ひとりオレを知っている人がいなくなっても、オレは完全に死ぬ事はできない。それも辛いな、と思いました」