ロイドはもう一度、ランシュの意思を確認した。


「おまえ、逃げたかったら、今からでも逃げていいぞ」


 ランシュはゆっくりと首を振った。


「いいえ。もう充分です。オレの今の人生は、ロスタイムのようなものだから」
「ロスタイム?」
「ソータに教えてもらったサッカーゲームの話です」


 首を傾げるロイドに、ランシュは笑って説明してくれた。

 そのゲームは、元々人が大勢集まってやる、スポーツだという。
 試合時間は決まっているが、試合中に反則や選手のケガなどで中断されると、中断された時間だけ試合時間が延長される。

 その延長された時間を、ロスタイムというらしい。


「オレの時間は、本当なら二年前に終わっていました。けれど記憶は五ヶ月間欠落しています。それを埋めるために、神様がくれたロスタイムだったんですよ。二年ももらったから、多すぎるくらいです」