このロボットが起動してから二年間の内に、経験した事や考えた事も記憶データとして蓄積される。
 それも合わせて感情が作られているとしても、経験のないランシュ自身が、家族との生活を楽しいとか幸せだとか感じるかどうか、計算するのは難しいような気がする。

 にわかに信じ難い事だが、このロボットには生前のランシュとは違う、独自の感情が芽生えているのかもしれない。

 言い換えれば、それは”心”だ。

 心があるという事は、生きているという事。
 今朝ランシュが言っていた事を、ロイドも否定はしない。

 けれどそれを、科学技術局の幹部局員たちに、どうやって納得させればいいのか、ロイドには分からなかった。

 黙り込んだロイドに、ランシュは静かに声をかけた。


「先生、話はこれで終わりじゃないんでしょう?」
「あぁ」


 力なく頷いた後、ロイドは意を決して、ランシュを真っ直ぐ見つめた。