自分の遺体を処分し、誰にも見つからないように局を出る事。
 そして病院と官庁街には近付かない事。

 ランシュの記憶を持つロボットは、局内の施設やセキュリティは熟知している。

 ロボットの能力でセキュリティをかいくぐり、局内にある実験動物の処理施設で遺体を処分し、難なく科学技術局を抜け出した。

 そして街角にうずくまっているところを、ベル=グラーヴに拾われたらしい。


「一番やりたかった事は、知らない間に実現してしまってるし、オレは目標を見失っていました。他にもやりたい事は色々あったはずなんですが、もう明日死ぬかもしれないってわけじゃなし、って思ったら、どうでもいい事のように思えました」


 ランシュはひと息ついて、茶を一口すすり、再び口を開く。


「オレは最初、おばあちゃんを”マスター”って呼んでたんですけど”おばあちゃん”って呼んでくれって言われました。”あんたはあたしの孫だから”って。おばあちゃんはオレをロボットだと知りながら、本当の孫のように扱ってくれたんです。必死になって研究に没頭しなくても、おばあちゃんと一緒に普通に生活しているだけで毎日楽しかった。そんな家族との普通の生活が一番楽しくて幸せな事だって、おばあちゃんがオレに教えてくれたんです。だからおばあちゃんを失った後、もう一度家族が欲しくなったんです」