街で家族の姿を、目にする事はあったかもしれない。
 だが常に監視のついていたランシュは、それに憧れるほどの接触はしていないはずだ。

 元々無表情で何を考えているかは分からなかったが、一番長く一緒にいたロイドには、そんな様子は微塵も見せていなかった。

 家族に対する憧れは、このロボット独自の感情だ。

 ロイドの動揺を感知したのか、ランシュはクスリと笑う。


「ウソじゃありませんよ。推測ですが、オレが復讐を宣言したのは、あなたに生涯をかけた研究を途中で奪われたからでしょう? けれどそれは、こうして実現しているわけですし、今さら無意味なものです」


 ランシュは自分の手を見つめ、遠い目をした。


「意外に思うかもしれませんが、オレの死に顔は、幸せそうに笑ってたんですよ。この手をしっかりと握って。夢を実現できたから満足してたんだと思います」


 ランシュはこのロボットに、メモを残して絶命していた。