涙が止まり、ランシュは一口茶を含む。

 落ち着いたところを見計らって、ロイドは一番知りたかった事を尋ねた。


「おまえは復讐なんか考えてないだろう? オレに復讐してやると言ったのは、死亡する一ヶ月前のランシュだ。おまえにはあの頃のランシュの記憶はないだろう」


 ランシュは少し小首を傾げ、口元に笑みを浮かべる。


「バレましたか。あなたが復讐しに来たのかと訊いたから、利用させてもらいました」

「なぜ、そんな事を……」

「オレは、ユイと家族のように一緒に暮らしたかったんです」


 ロイドは愕然とする。

 このロボットには、科学技術局で暮らしていたランシュの記憶しかない。
 生まれた時から局内で生活し、外出許可が下りてからも、パーツ屋か本屋にしか行かなかったランシュは、家族がどんなものか知らない。