店は元々玄関だった。
あまり手をかけて改装するとお金もかかるので、元々あった石段はそのままにしてあった。
けれどベルがやって来て、その時初めて、お客様の事を考えて改装するべきだったと後悔した。
わずか数段の石段も、杖をついたお年寄りには、結構な負担になるのだ。
「最初から毎回、わざわざ店の奥から出てきて手を貸してくれるって、おばあちゃん感心してたよ」
「そんな……。大変そうだったから、当たり前の事だもの」
「当たり前の事でも出来ない人が多いんだから、ちゃんと出来るユイはエライよ。
オレだったら気になっても見てるだけかもしれない」
「そんな事ないでしょう? ランシュは優しいもの」
「ありがとう」
ランシュは、はにかむように笑った。