「失礼します」
診察室から出てきたおばさんは
中にいるお医者さんに深いお辞儀をし
ドアを閉めた。
右手には大きな茶色い封筒。
左手には赤いハンカチを持ち
俺たちの目の前まで来た。
「健人くんっ唯をありがとう…」
『いっいえ』
「健人くんの家まで送っていくわね
車、病院の前まで出してくるから
そこまで唯をよろしくね」
『ありがとうございます』
おばさんは唯に何も喋りかけず
俺たちに背を向けて行ってしまった。
『唯、外まで行こうか
一人で歩けないだろう…?
俺に掴まって歩いていいからゆっくり行こう』
唯は頷くと立ち上がり俺の腕を掴んだ。
『よしっ行くぞ』
俺たちはゆっくりと病院の外を目指した。