俺は唯の両手を合わせ握りしめた。


『おばさんは
診察室に看護師さんと一緒に行ったよ

今話をしているんだ』

「そっか…」


俺がいま唯に話をしていた時、
唯はしっかりと俺の目を見ていた。

いつも俺に向けるあの眼差しのように…


だけど…だけど…

だけど、
もう俺の顔なんて見えていないんだよな…


俺たちが大好きな空も夕日も星も…

毎回楽しみにしていたドラマも…

いつも一緒に帰っていた道も…

これから作る思い出も…


映像として残ることはないんだ…


少し前まではこうなることを
覚悟していたけれど、

いざこうなると覚悟していたものが
崩れそうになる…


一番辛いのは俺じゃなくて唯なのに
泣きそうになる…


情けない男だな…俺は…