俺は愛美に何があっても
すぐ助けられるようにと
ベンチ一個分の距離をとって座った。
周りを見渡すと誰もいない。
時計の針は11時をさしている。
静かな公園に愛美の声だけが響いていて…
その言葉を俺は一言一言
逃さないように耳を傾ける。
「あのさ…
別れてほしいの…」
一瞬長い沈黙が流れる
冷たい風が俺の頬をかすめて、
木々がザワザワと揺らめいた。
「はっ?なんでだよ…
お前こっちこい」
「やだっ!離して!
あたし行かないからっ」
男は嫌がる愛美の腕を掴んで
どこかに連れて行こうとしている。
『あのーすいません…』
「あっ?なんだよ」
『コイツ、俺の友達なんですけど…
手を離してもらえますか』