***


次の日、朝起きるとサクはもう部屋にいなかった。

そういえば昨日寝る前に早番だって言ってたっけ……。なんだか身体が重い。色々考えすぎて深く寝つけなかったからかな。

私は渋々ベッドから起き上がり、サンセットに行く準備をした。


あれからサクは普段どおりのサクだったけど、やっぱり少し違って見える。

サクの過去を知りたいけど、それを打ち明けるかどうかは本人が決めること。それは分かっているけれど、正直どこか焦っている自分もいる。

だってサクといつまで一緒にいれるか分からないから。


きっと私たちの関係には期限がある。

だから、だから――。


「あれ?麻耶ちゃんなんか顔赤くない?」

サンセットに到着すると従業員のみんなが口を揃えてそう言った。


「え、そうですか?べつに普通ですけど……」

私は苦笑いを浮かべてエプロンに袖を通そうとした時、誰かがそれを手で止めた。


「おい、熱あるじゃねーか」

それは鉄さんで、その冷たい手が私の額に触れた。


「ね、熱なんてないですよ。私は元気ですから」

「バカ。ムリして働くほどうちは忙しい店じゃねーんだよ」

鉄さんは皮肉まじりに私の心配をしてくれた。


みんなの言うとおり、朝から具合は悪かった。でも昨日サクが〝風邪をひいたら俺のせいにしていいよ〟なんて言うから。

これじゃ本当にサクのせいになっちゃうよ。