「勝手なこと言ってんじゃねーよ。金を持ってさっさと帰れ」
鉄さんは投げられた茶封筒を見ようともしなかった。むしろ怒りを必死に押さえてる感じ。
「つれないねえ?昔の仲間だっていうのに」
……昔の仲間?
「てめえなんか仲間じゃねーよ。すぐに違うヤツと組んでバンドを抜けたのはお前だろ」
よく分からないけど、この尚って人も昔サンセットに来てたバンドマンだったのかな。
尚は高そうなライターをポケットから取り出して、タバコに火をつけた。指にはシルバーの指輪をたくさん付けていて、見るからに高そう。
「俺が抜ける前にあのバンドは終わってただろ。あいつのせいで」
「………」
「俺は音楽で飯を食っていきたかった。だから可能性のあるバンドに入った。それのなにが悪い?」
一触即発の空気だけど大丈夫かな……。他の従業員たちも邪魔にならないように店内の隅にいるし。
「音楽は遊びじゃねーんだよ。中途半端に妥協できる人間は絶対上なんていけない」
もっと言い方があると思うけど、この人は間違ったことは言っていない……気がする。
「それともまだあいつが戻ってくるとでも思ってんのかよ」
――ガシッ。
鉄さんの手が尚の襟元へと伸びた。