何か…温かくて、優しいものが

私の唇に触れている。

そう……

それは、アツの唇だった。

アツは、そっと、私の唇から、

自分の唇を離した。

「ねえ、『アツ』って呼んだら、していい?」

アツは、顔が赤くなりながらも、言った。

どうしよ…

ドクン…ドクン…ドクン…

この胸の鼓動は……

そう、今思い出したけど、

雄貴よりも、すっごくドキドキする、

胸の鼓動の音だった。

ああッ…どうして雄貴を今更思い出すの?

「アツ……」

私は、涙を流しながら言った。

「どうして泣いてるんだ?前の男のことか?」

アツには、雄貴のことを言っている。

「うん―…」

私は、こくりとうなずいた。

「大丈夫。俺がついてるから。俺はどこにもいかないよ…」

アツは、ぎゅッっと抱きしめてくれた。

「ねえ…いっぱい…人がみてるよ?」

私は、心配そうに言った。

「だったら、みせつけてやりてえじゃん?」

アツの言ったこの一言が、

嬉しかった。

恥ずかしかったけど、自分達は…

私達は付き合ってるの、

愛し合ってるんだよって…

このみんなに伝えたい。

自慢してやりたい。

だから―…

「どうして…私…すっごく幸せなんだろ?」

ぽろぽろとでる涙。

幸せすぎて…涙がとまらないよ……

「なんで泣いてるんだ?悲しいのか?」

アツは、心配そうに言った。

「ううん…幸せすぎて…幸せすぎて…」