それは、あの日の会話が原因やった―――



―――俺、あの時約束したやん。



『約束する!明日からは、実奈子に関わらへんし何も聞いたりせぇへん!』


実奈子に、無理やり声がでぇへんこと教えてもろた日。



それやのに、俺はその後も実奈子と話したり一緒に帰ったりで、約束破ってもうてた。


今更やけど、思い出してな。


遅いかもしれへんけど、あの時の約束守ろうて思ってまずは実奈子に会わへんようにしようって決めたんや。



それから、俺は毎日図書館に行く時間を八時以降にした。


実奈子が図書館におれる時間は八時までやろ。


でも、よぉ考えてみたら、八時から図書館で勉強しても一時間しかできへんやん。

あの図書館、閉館時間が九時なんやで。


知ってたか?


それはえぇとして、それやったら家でやればえぇやろ、って何回も思った。


行く手間も省けるし、勉強やるんに絶対図書館でやらなあかんっていうわけやないやん。



けど、行ってまう。


体が、足が、頭が、勝手にそうしようって動いてまうねん。



で、そんな日々の中で昨日、図書館である人に言われたんや。


実奈子が帰ってもうてからな、一人のおじいさんが話しかけてきた。



『あの子、ここ最近勉強しに来てたみたいやけど、周りをキョロキョロしてて誰かを探してるみたいやったけど。』


『え、あ、そうなんですか。』



俺はそっけなく答えた。


でも、最後に言われた一言で俺は今までの自分の行動は間違ってたことに気付いた。



『君とここで勉強してたときはあの子の目には光があった。でも最近は、その光を捜そうと必死やったみたいやけどね。』