「とりあえず、座ろうや。」



勝利がうちの手をそっと放してくれた。


そのまま家に帰ることもできた。


けど、このまま帰ってもうたら勝利が変な目で見られてまう。



うちのせいで勝利には迷惑かけたなかった。


勝利の後について行って、勝利の隣の席に座る。



そこはいつもうちと勝利が使ってた席とは違うところ。


図書館の端っこの方の席。



そっと椅子に座って動かへん二人。


気まずい空気が流れる中、勝利が勉強する準備をする。



うちは、いまだに動けずにいてた。


ホンマは今すぐにでも帰りたい。


こんな自分を見てほしくなかった。



「実奈子も勉強せなあかんのとちゃうん?」


ふと聞こえたその言葉に顔を上げると、勝利はノートに夢中。


書きながらうちに言うただけらしい。



このまま勉強せぇへんで家に帰ったら時間の無駄で終わってまう。


できればそれは避けたい。



鞄の中からノートと筆箱を取り出す。


それを机に置いたとき「クッシュ」と、くしゃみが出た。



この席、メッチャさっきからエアコンの風があたってる。


寒いわけや。



早ぉ勉強すませて、帰ろう。


勝利の隣にも、いたくないし・・・。



そして、うちも勉強を始めた。


そのとき・・・