ジャーッ

「はぁ……」

 湯気が立ち昇り、シャワーから吹き出ている程よい温かさのお湯を足に当てる。王様が出て行ってしまった後、素足で歩いていたせいで少し汚れて冷えきてしまった足を暖める為に、バスルームの中で溜息を1つ。

「もう温まったかな……よしっ」

 ようやく足元の肌がほんのり赤く色づき温まったことを確認し、シャワーを止め水滴を拭いバスルームから出て、ベットへと直行しそのままダイブ。

「うわぁ、気持ち良い~」

 ふかふかで肌触りが良い枕に顔を埋める。




 しばらくそうしていたけれど、寝返りを打ち仰向けになって天井を仰ぎ左手を伸ばす。左手の中指にある、シャンデリアの灯りに反射して輝く母さんの形見の指輪。
 熱かったのも気づけばいつの間にかなくなっていて、指輪に指先で触れた後そっと外す。
 あの熱さだったから火傷の痕が残っているだろうと思ったのに、痕なんて一切残っていない。それを確かめて、また指輪を自分の指へと通し見つめた。

「一体、あれは……なんだったんだろう」

 それから思い出すのは、闇の中で姿を確認出来なかった声。

「でもあの声は、私がここに来た理由を知ってる風な口ぶりだった」

 思い返しても何も分からないし、知りたいと強く思う。私がここに来た理由……意味を――。

「あの男の人も」

 龍の間で起こった出来事―――彼は一体何者なのか……。王様と敵対視してると、2人を纏う雰囲気や王様の表情で感じ取れた。
 この国にはこの国で色んな事情を抱えているんだろう。私がこの世界へ来た理由も関係してるのだろうか。
 でも……1つ言えることは、あの男の人には二度と会いたくない――ということ。思い返しただけで身震いしてしまい、それを抑えるかのように小さく身を丸めた。冷たく感情がない見据える瞳と、全身が粟立つ程の冷たく重く低い声、氷のように冷たい手の感触。

(すごく怖い……)

 男を目にした時、これから何か不吉な事を起こさせるような、そんな闇の色の瞳がとても恐ろしく感じた――。