きょろきょろと、消えてしまった剣の行方を捜すが何処にも姿形はなく、王様は右手の指を閉じたり開いたりを数回繰り返す。

「剣……は一体何処へ――」

「そんな事より、とっとと行くぞ」

 突然歩き出した王様を慌てて追い、肩を並べ目線を上げた。

「へ? いっ行くって何処にですか?」

 私の放ったすっとんきょな声に、呆れたような表情へ変えて息を軽く吐き出した王様。じろりと視線を向けられ小さく肩を竦める。

「戻り道が分からないと言っただろ」

「……そうでした。ごめんなさい」

 窓から月の明かりと壁に燭台が取り付けられ蝋燭の明かりが奥へと続いている薄暗い歩廊へと出る。奥の薄暗さに身震いをしたけれど、私が前へ歩き出そうと思った時、腰と膝裏に妙な感触が。っと思ったのも束の間、体がふわりと浮く感覚と共に目線が突然高くなったことに驚きの声を上げた。

「ちょっちょっ!! えー!!」

 突然の出来事に頭の中は軽いパニック状態で、恥ずかしさからバタバタと暴れる。それにこんな事、今までの人生でされたことなかったし、王様との顔の距離がより近くなり、恥ずかしさから体温が急上昇。

「暴れるな! 落ちるぞ!」

「どうして、こんなことするんですか!? 重いですから降ろして下さい!!」

「はぁ。お前な、自分の足元よく見てみろ」

「あっ足元……?」

 顎を動かす王様の動作の先を見遣やると、その先には――。

「これで部屋まで歩いていくつもりか?」

「…………」

「まさかとは思うが、気づいてなかったのか?」

 言うなり、王様は少々呆れ顔で頭を軽く振る。
 私が目にしたのは、自分の素足。つまり靴を履いていない状態、王様の言う通り、全然気づきもしなかった。ずっと冷たくて硬い大理石の床の上にいたからなのか、足の先は冷え指先が赤くなっていて感覚もあまりない。

(だから気づかなかったのか……って、普通気づく……よね)

「あのっでもいいです! 大丈夫、自分で歩けますから!! ここまで来たら素足でも何でも気にしなければ平気です」

 恥ずかしさも伴って王様の腕から降りようと体を思いっきり捩ったけれど、王様はそれを許さないように腕に力を入れ歩き出してしまった。これは、諦めるしかなさそうで、肩を竦めて仕方なく身を委ねた。