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 ギル達と別れてからアディルさん達のところへ戻る途中、ふと目に入ったテラスへと立ち寄り、柵に両腕を乗せ何度かため息を繰り返してどのくらいが経ったんだろうか。見上げると、灰の色をした雲が広がっている。その向こう側にうっすらと、あの月の形が分かる赤がかったオレンジ色が光を放つ。

「また雨でも降るのかなぁ」

 そよぐ風が時折、冷たく感じて身が震える。
 この世界に来てから色んなことが起こりすぎて、自分でもよく分からない。何が現実で何が夢なのか。こうして一人でいると、温かくて満たされていたものが一気に冷めていく。

「あきな」

 ふと、背後から声がして振り返る。

「ジン?」

 そこには、いつからいたのか穏やかな表情をして立っているジンの姿が。漆黒の髪を揺らしながら歩き私の横へと辿りついて、同じように柵に片肘を預け、木々が生い茂る森へと目を向けた。私も自然とジンと同じ方向を見遣る。

「どうした? こんな所に一人で」

「ん? ううん、ただ……外の空気を吸いたかっただけ」

「そうか。だが、危険がないとは言い切れない。危機感を持っていろ」

「……うん、ごめん」

「謝らせる気はなかったんだが」

 互いの顔を見ずに言葉を投げかけていく。時折、冷たい風が2人の間をすり抜ける時、その冷たさに少し身震いしてしまう。

「アディルの元に戻ってやれ」

「アディルさん……怒ってるかな?」

「いや、怒るどころか心配していた。少し風が冷たい、そろそろ中に入ろう」

「そうだね」

 言葉の後、互いに振り返る際に2人の視線が交わる。軽く口端を上げてジンに見せたら、ジンの優しい眼差しが返ってくる。テラスの硝子戸側へ視線を移したら、そこにはアディルさんの命を受けて護衛してくれている騎士さんの姿もあった。

「あの、騎士さんは……」

「あきなの護衛を命じられているから、あいつはお前があの盗賊達を追いかけていく後ろから付いていたんだ」

「え?」

「それで、お前達が話している間に俺達に伝えてくれてな。アディルが迎えに行くと言ったが、あいにく仕事が残ってたようでな。俺が代わりに来たというわけだ」

 先に足を前へ踏み出したジンの後ろから、私もそれに付いて歩む。

「そういえば」

 ジンが歩みをふいに止めて、漆黒の瞳がこちらに向けられ。