ドクン ドクン ドクン
規則正しく聞こえてくる鼓動。
ゆっくりと瞼を上げ、閉ざされた視界を開いていく――。
「今度は、一体何処に来たの?」
視界に一番に飛び込んできた色に、呆然としている脳内には刺激が強い。一面に染まるのは赤。無音で、ただ赤が支配してる世界。
漆黒の次は深紅。視点がまだはっきりと定まらない目がチカチカし、瞬きが増える。それに体が浮いているような妙な感覚があって、気持ち悪さが徐々に競り上がってくる。
一体自分の身に、何が起こっているのか理解出来ない。この空間のせいで、頭も目もおかしくなりそうで、早く抜け出したいと強く願い再び固く瞼を閉じる。
――ようやく――
頭に直接響いてくるような声に、固く閉じた筈の瞼を勢いよく開く。開かれた視界には、ぼんやりと淡く光る白の球体が浮かんでいた。その光は、不思議ととても優しく感じられ"懐かしい"という言葉が、頭に思い浮かぶ。
「今の声は、あなたなの……?」
赤に埋め尽くされた周囲には目もくれず、球体を見つめながら呟く。
――我だ――
再び残響を交え聞こえた声は、私の問いに答えた。その声の主を見続けていると、背中がふいに押された気がして、首を捻り背後へと向ける。すると、背後から赤に染まっていた空間が押し迫ってくるように強い光に支配されて、眩しさに再び瞼を閉じざるおえなかった。