見遣った先、王様が未だに握っている剣の鍔(つば)に触れていた。鍔には黒の珠が3つ埋め込まれていて、黒で統一されてる剣は言葉にするには難しいけれど、どことなく怖く嫌な感じが否めない。
 何故か頭の中で自身に告げ知らせ、顔を少し歪ませる。長く触れてはいけないという直感で、剣から距離を取ろうとした時だった――。

「っ!!」

 指先から伝わってきたのは、あの時と同じ突然の発熱。徐々に熱が高くなり、ビリビリと体全部にその熱が伝わり熱に顔が歪み、肌から汗が噴き出してくる。

「やっ……これ……どうなって……」

 熱を感じる手に目を遣ると、左手中指に通されたシルバーの――母さんの形見の指輪に埋め込まれている赤い珠が光を帯びていた。―――帯びているというより、噴き溢れているという方が正しいのかもしれない。今回はあの時よりも数倍もの熱さに感じ、このまま耐えれるのかどうか。
 指輪を外してしまいたい衝動に駆られ、重く感じる手を剣から離そうと試みる。けれど、視界の端から更に強く光る赤い光が混じり入って来る。その方を苦痛に視界がぼやけながらも、視線を遣った。
 剣先に指輪同様に埋め込まれている赤い珠から光が溢れ出し、一筋の形に変え私の方へと襲ってくる。

「なっ! やっ……」

 声を上げたのも束の間。一瞬にして、私は赤い光に包み込まれてしまった。視界は赤に染まり、あまりの光の強さに耐え切れず、瞼をきつく閉じる。そして、熱に耐え切れず、そのまま私は意識を手放してしまった――。