うっすらと浮かび上がっていく光景に、勢いよく視界が開けた。映し出された光景は、王様の剣が相手の腹部を貫いている姿。

「ハァハァッハァ……」

 膝を着いた荒い呼吸を繰り返す王様は、グリップを握り締め、しっかりと相手を見据えていた。

「王様、よかっ……た」

 また体から力が一気に抜けてしまいそうな感覚を、何とか踏みとどませる。煙は王様の姿に変え、時が止まったかのように振り下ろされかけた剣は、上方を指したまま。双方の同じ姿に、私の胸の中は言いようのない感情が生まれる。目を覆いたくなる光景に、目を逸らそうとした時――淡い光が視界を染めた。

「っ!?」

 驚く私の目前で、小さな光の粒が体を貫かれその場で立ち尽くす男の体を、無数の粒が覆い尽くしていく。

 パンッ!

 そう音が鳴ったと同時に光の粒が弾け飛び、男の姿は跡形もなく消えた。

「何がどうなって……えっあの人は」

(人間じゃなかったって、こと……?)

 頭の中が再び混乱に陥る。王様が2人いたことも未だに理解出来ずにいたのに、何故か突然、腹部を貫かれた目前の人物は光を帯びて消えてしまったことに、更に混乱し頭を抱えた。

「ック、カッハッ!!」

「王様!?」

 床に吸い寄せられるように、身体を強く打ちつけ倒れた王様に慌てて駆け寄った。

「大丈夫ですか!? 王様!!」

「ハァハァ、大したこと……ない。ハァハァ、放って、おけっ」

 大したことない筈ない。こんなにも大量に汗を顔全体に滲ませて、雫が止めどなく流れ落ちてるのに。少しでも楽になったらと、自分の太腿に王様の頭を乗せる。よく見たら、汗ばんだ腕には幾つか切り傷があり、血が汗と混じり肌を伝って流れている。放っておけと言われて、そう簡単に出来るわけがない。

「すぐに手当てをしなきゃ! どうしよう……ここに治療する道具なんて」

 辺りを見渡しても、支柱だけが存在し、物一つない空間が広がっているだけだ。王様を抱えて、シェヌお爺さんの元に運ぶか。男性を果たして、自分よりも体格が勝る相手を抱えられるのか――。きっと無理な話で、扉にまで連れて行くのが精一杯な筈。それならば、シェヌお爺さんをこの場所へと連れてくるべきなのか。迷って時間を食ってしまうのは目に見えてる。現にこの場には、偶然に辿り着いただけのこと。
 困り焦っている時、ふいに左手に硬質の感触が伝わり、下方を見遣る。