キンッキンッキキッキーンッ

「ここの中から聞こえる」

 閉ざされた扉に耳を当て、その奥から金属の音がしてる。よく耳を澄ませてみると、微かに人の声も。
 辿り着いた場所は、さっきいた所からさほど距離はなかった。でも――1つだけ頭に引っかかったこと。
 閉ざされた扉の前にいても、こうして扉に耳を当てないと聞こえない程の音量。それなのに何故、遠く離れていた私にまで届いたのかと不思議に思う所。けれど、腕を組んで考えてみた所でそれは解明出来ない。

「か、考えててもしょうがない……よね? ここに人がいるみたいだから、事情を説明して教えてもらおう」

 今の時間が把握出来てない。部屋に早く戻らなくては、アディルさんが夕食の迎えに来てしまうかもしれない。さっきのメイドさんが夕食の支度がと口にしていたから、きっと時間が迫ってる。あれから、さ迷ってた時間も考えたら――。
 私の姿がなく、また迷惑を掛けてしまっている懼れがある。そう思って、扉の取っ手に手を添え、指先に力を入れてそっと扉を押し開いた。






 開かれた隙間から顔を覗かせ、中をそっと伺う。目前には太い支柱が天井から床にどっしりと存在感を現していて、数えるだけでも4本。その柱が影になって奥までは確認出来ないけれど、恐らくまだ奥にもあるんだろう。支柱の太さと高さから、この部屋は相当広く特別な部屋なのだと察する。

「あのっどなたか、いっらしゃいますか?」

 扉の影から抜け出し、後ろ手で静かに閉める。支柱に隠された自身を、その影から奥を覗き込み、小声ながらも発した時だった。

 キンッ!! カキーンッ フュッ

 甲高く鳴り響く、金属同士のぶつかり合い、そして空を切り裂くような音。辺りを見回し、行き着いた私の眼差しの先には――。

「ハァハァッ……くっそっ」

 荒い息遣い、額から顎にかけて滑り落ちている汗を手の甲で拭っているのは――王様。あの大きな剣を支えに、かろうじて立っている。そして、ふと力が抜け膝が地面へと落ちた。
 その瞬間、私は駆け寄ろうと支柱の影から飛び出た時――上から何かが目の前に降り立つ。それは、すぐに人間だと認識する。