* * *



「で……ここは一体何処!?」

 頭を抱えながら、歩廊のど真ん中にしゃがみ込む私がいる。

「どこで道、間違って来ちゃったんだろう」

 胸のもやもやを抱えたまま、勢いに任せて歩廊を進んで来てしまったせいで、部屋に戻るどころか迷ってしまっていた。気づいたときには、右も左も分からなくなってしまい、人に聞こうにも誰1人としてその姿はない。
 ふと窓の外を見た時には、もうすでに陽は沈み外は暗く、歩廊の壁にある燭台には既に灯りが灯っている。私がこの場所に来る、一足先に誰かが点けて行ったよう。

「あー……この城は迷路になってんの? 扉の模様が全て同じように見えて、どれがどの部屋か分からない」

 歩けど歩けど自分の部屋と同じような扉ばかりで、一部屋ずつ開けてみるも別の部屋。完全に私の頭の中は、来た道さえ思い出せずグルグルと回っている状態。階段も上がったり下がったりで余計だ。それも歩廊自体が薄暗く、前がはっきりと見えないせいもあって、まるで迷路に迷い込んでしまったような感覚。
 誰かと出会えればと甘い考えでいたら、現在の場所に行き着くまでにまったく誰とも出会わない現状。

「こんな時に限って、誰もいないんだよね……。自分が悪い、よね、全部」

 肩を落とし盛大なため息をつき、顎を乗せて膝を抱える。

「いつまでも、ここにいても仕方ない。何とかして部屋に戻らないと、アディルさん達が気づかないうちに」

 この場にずっといても解決するのには時間が掛かる、とりあえず先に進んでみようと立ち上がった。

「歩き回ってれば、もしかしたら偶然にも部屋に行き着くかもしれない。それか、必ず誰かに出会えるはず」

 そう自分に言い聞かせるように声に出す。よしっと、自分に渇を入れ、目的の場所へと向かおうとした時だった――。

 ガタガタガタガタガタッ!

「ひゃぁっ!」

 突然響いた大きな音に驚き、頭を抱え叫び声を上げる。

「なななななにー!?」

 驚きのあまり、心臓が異常な程に速く脈打って力が抜けた体を動かし、その音の正体を探す。

 ガタガタッ

 今も鳴る音に、正体はすぐに判明。