無表情のアッシュさんの冷やかな青い瞳と出合い、口端を強く結んだ。
「愛想を振りまき、腹が減れば泣く。赤子のように誰かに手を貸しもらう。お前は赤子同然だな」
徐々に私の眉間の皺が、知らずの内に刻み始めてくる。
「何だその顔は。言いたい事があるならはっきり言ったらどうだ」
いつしか私は彼を睨みつけていたんだと思う。
アディルさんが言っていたことを思い出す。たくさんの人が傷ついたこと、王様が狙われてる事実。それが原因で私を警戒しているということ。それは頭では分かってる――分かってるのに。私はこの人にここまで言われなきゃいけない程なのか。どうしてこの人はこんなにも私を――。
「赤子だから話せないんだったな」
また人を見下したように言い放たれた言葉に恐れは消え去り、それと共に怒りが込み上げた。ギュッと両の拳を思いっきり握り締める。
「私はたしかにこの国の人間ではないです」
少し震える口から出た言葉は、今までと違ってはっきりとしていた。それを認識したら、次々と言葉が溢れ出てくる。
「私は違う世界の人間です。周りの皆さんに迷惑を掛けてしまっているのは事実で、それは本当に申し訳なく思っています」
アッシュさんを強く見つめた私の口は止まらない。
「あなたは私が"異世界から来た"という話を信用してないようですけど。他の世界から来たのは紛れもない事実なんです。だから信じてとかそんな事は言いません。だけど……」
徐々に最初の勢いが、言葉を紡いでいくうち落ちていく。その理由は――ずっと表情を何一つ変えずに私を見下ろす青い瞳のせいだ。深いこの青に次第に引き込まれそうになる。
「ここに来た理由は、王様にお礼を……言いに来ただけなんです」
「言いたい事はそれだけか」
冷たく言い放つ声に、視線を下げる。
「お前が何処から来たなど、俺にとってどうでもいい」
「…………」
「王に近づくなと言ったことをもう忘れたか」
「……それは覚えてます。でも直接王様にっ」
「これも覚えておけ。お前が少しでも怪しい行動を見せた時は――」
靴音を響かせながら歩み、私の真横へと並ぶ。
「お前を」
――初めてこの人と会った時と同じ。
「殺す」
酷く冷酷な声音は、私の身を凍らせた。