そのまま後ろを振り向かずに俺はドアを開けようとした。
「夏起くんっ。」
「俺はもう梓紗には関わらないから。こんなに汚いんだからな。」
「そんなことっ!!!!」
「俺は今まで、色んな女を抱いてきたんだ。梓紗みたいに綺麗じゃない。」
「………っ………。」
何かに耐えるような声が梓紗の口から漏れた。
「俺はもう梓紗と一緒には居られない。」
その瞬間、俺は一筋の涙を流した。
拭うことすら忘れた。
もう何もかもが終わったように感じたから。
たった一言。
『一緒に居られない』
そう告げたはずなのに。
「汚い。」
後ろから聞こえてきた梓紗の声に身体がビクッと揺れる。
完 全 に 時 が 止 ま っ た 。
思考が全て止まった。
呼吸することも忘れたかのように苦しくなる。
あぁ、俺はなんであんなに酷いことしか出来なかったんだろう。
助けてほしい。
底のない暗闇の深さにどこまで落ちていけばいいんだろう。
「ッククククク。」
俺は壊れたかのように笑った。
「そうだな、俺は汚いよ。」