初めて梓紗に逢った時に見せてくれた笑顔だった。
「夏起くん??」
呼びかけられても答えられなかった。
それほどに俺は梓紗の笑顔を見れたのが嬉しかった。
気が付いたら、その細い身体を抱き締めていた。
「夏起くん!!!!」
少しだけ、梓紗が身体を揺らす。
どこにも行かないでくれ…………。
俺は、梓紗をまた失いたくなかった。
「……っ………夏起っ………くん……。」
梓紗の苦しそうな声にハッと我に返った。
「っゴメン!!!!」
すぐに梓紗から離れて少しの距離をとった。
梓紗に…………触れてしまわないように…………。
あの時の梓紗の泣き顔が頭の中でフラッシュバックする。
カタカタと手が少しだけ震える。
また、俺は梓紗を傷付けてしまった。
せっかく笑顔にさせることが出来たのに!!!!
俺は、俯いていることしか出来なかった。
心が張り裂けそうなほどに痛い。
「っつ………。」
唇を強く噛んで手の震えを止める。
胸の痛みをかき消すかのように。