「梓紗……………。」


居ないはずの名前をそっと靡く風と共に呟いた。


だけど、帰ってくるはずがないのに__________。



「ねぇ、呼んだ??」


俺の後ろから聞こえてきたんだ。


ずっと俺の心を捕えて離さない______梓紗が____。


「………な…………んで………??」


「まず、何があたしに聞きたい??どうして病院を抜け出したのか??それともなんであの小屋に居たのか??」


少しだけ、梓紗の顔は…………青白い。


どこか、生気が感じられない。


「俺が…………聞きたいのは………。」


「ねぇ、夏起くんは何があたしに聞きたい??」
     ̄ ̄ ̄ ̄

「!!!!」


「どうかしたの??」


「梓紗、もしかして記憶が!?!?」


「……………うん。戻ったよ。何もかも。」


「いつ戻ったんだ!?!?」


「あの小屋であたしが手紙を書いてる時に。」


……………頭を鈍器で殴られたように感じた。


手紙を…………書いてる時………。


梓紗はあの小屋で、俺が梓紗を抱いた場所で_______。


何もかも記憶を取り戻した…………。


俺が…………梓紗を…………悲しませてしまった場所で………。