俺は琉斗たちの目の前でケータイに手を伸ばした。
俺のケータイにはストラップが付いている。
俺が初めて梓紗にあげたお揃いのストラップ。
梓紗の誕生日にあげた。
なんで、梓紗は俺が誕生日を知っているのか不思議そうにしていた。
ずっと梓紗のためにバイトをしていた。
梓紗の喜ぶ顔がどうしても見たくて。
どうしても梓紗の笑った顔が近くで見たくて。
俺はそんな欲望を、下心を隠しながら梓紗にストラップをあげたんだ。
でも、そんな俺の考えを知らない梓紗は頬を真っ赤に染めて嬉しそうに言ったんだ。
『これ、ずっと大事にするね??どんなものよりも綺麗に見える!!!!』
俺は、梓紗の言葉に苦笑いしか出来なかった。
でも、喜んでくれたことには変わりはない。
その真実に俺の心は躍っていた。
「ハァ~。」
気を緩めてしまうと必ずと言って良いほどに溜め息が出てくる。
「ゴメンっ!!!!ちょっと用事、思い出した!!!!」
そう言って彩海は、俺と琉斗に謝ると走りさってしまった。
チラッと琉斗を見ると、彩海が走って行ってしまったドアを淋しそうに見ていた。
「そんな顔してるなら追いかければ良いのに。なにしてんだよ。」
「今の彩海は何か俺に隠してるから。」
「彩海が琉斗に隠し事??それはないだろ。」
「彩海は最近、この学校の誰かと会ってるんだ。」
琉斗の表情はどこんか切なげに見える。
本当に彩海を大事で好きなんだな。
そう思えるほどに琉斗の想いは本気だった。