そんな時だった。
あたしは『汚れ』を知らない彩海に出逢った。
あたしが落としたストラップを拾ってくれた。
走ってきたのか冬なのに少しだけ額に汗をかいていた。
「あのっ…………これっ……落しましたよっ……。」
息を切らせながら一生懸命に追いかけてくれたらしい。
初めて、彩海を見たときは…………。
「優しいんですね。」
そう気付いたら言っていた。
そしたら、彩海は少しだけ驚いた表情をすると………。
「もし、このストラップが無くて悲しんでたら届けたいなって思って気が付いたら走ってたから。」
彩海は少しだけ息を整えるとそっと微笑んだ。
「悲しんでたら??」
「そう、悲しんでたら幸せなんて来ないから。まぁ、あたしの大事な人からの受け入りだけどね??」
そう言って顔を赤らめた。
「彼氏に言われたんだ。」
「まぁ、一応かな。多分、あたしが彼女かもね……。」
その表情は酷く暗くて、話を聞いてあげたいと思った。
放っておいたらどこかに儚く消えてしまいそうだったから。
「ねぇ、あなたはなんて名前??」
「あたしの名前??」
「そう、あたしは梓紗って言うの。」
「あたしは彩る海って書いて彩海だよ。」
「彩る………海………。」
その名前は彩海にピッタリだった。
彩海は少しの言葉にも色んな表情をしていた。
クルクル変わるその表情は綺麗な海のよう。
彩海__________________。
それは、あたしの心の中に響く名前だった。