あたしが恋に堕ちた場所。
初恋に陥った場所。
あぁ、この場所だけは綺麗なままでいたい。
こんなところであたしは泣けない。
あの頃の思い出は汚したくない。
恋に落ちたのも、初めて話しかけたのも笑ってくれたのも。
何もかもココが『始まりの場所』だった。
そんな始まりばかりの場所を『最後の場所』にはしたくない。
あたしはそっとドアの近くに行った。
「出られないよ、鍵が掛かってるから。」
その声と同時にあたしはドアに手をかけた。
「じゃあ、開けて。」
「それは出来ない。」
「どうして??」
「梓紗にちゃんと聞きたい。」
「なにを。」
「告白の返事。」
「告白の…………返事………………。」
あたしは鈍器で頭を殴られたような痛みがはしった。
あぁ、神様ってほんとうに居るの??
なら、いまこの状況を無くしてほしい。
あたしの濡れた制服から水がポタポタと垂れていく。
夏起くんの制服からも同じように水が垂れる。
あたしはその落ちていく水滴を見つめながら答えた。
「告白の返事は答えられない。」