「…………………。」


夏起くんは何も喋らなかった。


ただ、さっきと同じようにあたしをじっと見つめる。


変わっているのはあたしが叩いたせいで頬が赤くなっているだけ。


「どうして離すんだ。」


「どうでもいいでしょ。」


「言えよ、そしたら離す。」


「今から死ぬから。」


その瞬間、あたしは夏起くんに乱暴に海に出された。


夏起くんに掴まれた腕が酷く痛い。


どこに連れてくんだろう。


すると、海の近くにあった古い小屋に連れていかれた。


中にはベッドと毛布。


ここは何だろう。


夏起くんはあたしの腕を離すと近くにあった暖炉の気に火を付けた。


あぁ、思いだした。


ここは夏起くんがあたしを助けてくれた場所だ。


初めて海に行った時、あたしは反対側に居たはずなのにいつの間にか浮き輪に浮かんだまま眠ってしまって流されていたんだ。


その時に、夏起くんがあたしをこの小屋に連れてきてずっと起きるのを待っていてくれたんだ。


ここは夏起くんの『プライベートルーム』らしい。


だれ1人、この小屋には入れないらしい。


前に教えてくれた。


その時に、あたしは恋に落ちた。


夏起くんに助けてもらった時にあたしは堕ちたんだ。


夏起くんの……………全てに。