「え?用なんかないよ。寮にいるつもり」

 あたしは正直に答えた。

 というか、今のこの瞬間までそんなこと忘れていた。

 そうか、もうすぐゴールデン・ウィークなんだ。



 一瞬静まり返った。

 あたし、何かへんなこと言っただろうか。



「それは出来ないわよ、小町」

 雅が机に肘を突いて身を乗り出してくる。

「どうして?」

「どうしてもこうしても、寮監さんもお休みさせてやらないと可哀想だろ?」

「こんなときじゃないと家に帰れないわよ」

 両側から声を掛けられて、あたしは右に左にキョロキョロと目線をさまよわせた。




「ちょっと、私が小町と話してたのよ!」

「俺が優先だろう!婚約者なんだから」

「一方的にアンタが言ってるだけでしょ!」

「決定事項なんだよ!」

 声が同時だったもんだから、二人ともまたケンカを始める。

 まったくもう、うっとおしいよ。