「キモイわよ、虎之助!」

 雅がついに切れてあたしの肩の後ろから、ぐいぐいと虎を遠ざけようと腕を伸ばして押し出した。

 あたしを挟んで二人の体が揺れる。




「なんでだよー。雅の茶髪なんか好きじゃないから、ほっとけよ!」

 またこのパターンだ。

 だれかこの二人をどこかにつまみ出してくれないだろうか。

「大体さ、なんか雅って実際より暗くしてるの?変じゃない?」

 虎が雅の頭の天辺辺りを見つめている。

 そうか、染めて時間が絶ってるから生え際の明るい髪が見えてるのかも。

 っていうか、普通は気づかないと思う。




 あなどりがたし、虎!

 野生の勘ってやつ!?

 雅の変装がばれちゃうんじゃないの?




 あたしはソワソワ落ち着かなくなったけど、雅は涼しい顔のままだった。

「別に、光の加減でしょ」

 そうサラリと言いながら窓の方を見る。