「バカじゃないの?だからって毎日毎日、うるさいよ!」

 雅がイライラするのも無理がない。

 虎ときたら、もう誕生日会からもう随分たつのに、毎日毎日側に来てアピールして来るんだ。

 最初はまだ良かったんだけど、そのうち伊鈴がきて、とりまきがきた。

 教室の中は全員席についてもスカスカぐらい広いはずなのに、あたしのまわりだけに人が集中している。




 明らかに不自然なのに、先生方は何も気にした感じが無いのが不思議というか不気味というか。

 この学校の先生ってなんか生徒を放置というか、自主性に任せているというか、そんな感じなんだよね。





「それにしても、小町の髪キレイだなあ。俺、大好きだな」

 虎が雅を無視して、肘を突いたままあたしの髪を手ですくった。

 編入してきたときもそんな風に言われたっけ。

「黒い髪が好きなの?」

 あたしは染めても何もしていないから、真っ黒な髪だった。

 結構お手入れにも気を遣っている。

 お兄ちゃんがあたしの髪、キレイだっていってくれたから……。

 それからあたしはこの髪が好きで宝物になった。

「んー。そうだね、まあ、小町の髪だから好きなんだけど」

 虎は髪を一房すくって形の良い薄い唇を押し当てた。



 げっ、勘弁してよ。

 周りの空気が一気に5度ぐらい下降した気がした。