四月十五日。
某私立大学に通う私は、とりあえず今日はまじめに講義に出席していた。
出席単位だけ気にしていれば良いレベルの大学なので、私は三年になってから講義をサボりがちだった。
「お? 今日はちゃんと出席しとるんやね七穂」
第三講義室で、講義の開始を待っていた私にポニーテールの大阪弁女が声をかけてきた。
「ん? おー、茜【あかね】。久しぶりだね」
「ほんまにな……。一週間ぶりくらいやで? もっと講義出てこんかいアホ」
そう言って眼鏡を光らせながら、大阪弁女こと日高茜【ひだか あかね】が隣りに座った。
「べつに良いじゃない。出席単位さえ満たしてれば卒業出来るんだから」
そう言った私を、茜はジト目で睨んできた。
「あんたそれ嫌味やで? そんなんだけで卒業出来るの七穂くらいやて」
「そうなの?」
私がそう聞くと、茜はそうや、と頷いた。
「ったく、これやから天才は……いや、バカやったっけ七穂?」
「うっさいバカネ」
「バカネゆうな!」
茜が怒鳴ったのとほぼ同時に、講義室に講師が姿を現した。
「はーい、講義が始まるから静かにしようねー、茜ちゃーん」
「このっ……覚えとれよ……いや、やっぱいま殴るっ」
ポカッ、と頭を叩かれた。
「いたっ!」
完全に不意打ちっぽくなっていた。
「くっそ……茜こそ覚えておきなさいね」
私が睨むと、茜はにひひひっ、と意地の悪い笑みを浮かべた。
「悪いっ。もう忘れてもうたわーっ」
「……もう良い」
ムカつくが、講義が始まったので堪えることにした。