四月五日。
今日は同じ大学の友達が来る。
昨日の内に掃除を済ませてしまったので、私は座ってコーヒーを飲んでいた。
現在時間は十時半ちょい前。
そろそろ来る頃だ。
とくにもてなす用意はしていない。
お互いに気の知れた仲だから、遠慮なく普段通りで接せるのだ。
なんだか改めて言葉に直して感じると、こそばゆい。
いま私、きっと顔がニヤけてる……。
――ピンポーン。
そんなことを考えている内に、玄関のチャイムが鳴った。
「はぁーい」
どうやら来たらしい。
ドアを開けるとそこにはやはり中瀬美紗【なかせ みさ】がいた。
「はよー、遊びに来たよー」
「いらっしゃーい、さぁ、上がって上がって」
お邪魔しまーす、と言いながら美紗は靴を脱いで部屋に上がった。
「いやー、相変わらず殺風景な部屋だね」
部屋の様子をぐるりと見回して、美紗は笑った。
「いつもいつも失礼ねー、あんたは。べつに良いでしょー? 私はシンプルな感じが好きなの」
殺風景とかシンプルとか言うが、カーテンは青いしラックも水色だ。
十分カラフルな気がするんだけど……。
「いや、カラフルとかそういうこともだけどさ。とりあえず物が少ないってことよ」
「それこそ十分じゃなーい。これ以上何か増やすと狭くなるし、増やす必要なんて無いでしょう?」
この部屋は押入れを含めて八畳なのだ。
これ以上家具が増えると、きっと住みづらくなる。
「んー……ま、それもそうか。それに、七穂らしいしね」
「美紗ー、それってどういう意味なのかなー?」
それからも、あはははっ、と楽しく笑いながら時を過ごしていく。
ふと、思ったが。
この部屋で美紗は目立つ。
さっきの美紗の言葉を認めるわけじゃないけど……やはり色のバリエーションが少ないこの部屋では、ピンクの春らしい可愛いカーディガンの美紗は目立った。
美紗は外を出歩いて来ているわけだから、きちんと化粧もしていた。
少し濃いめのピンクのルージュが美紗にとても似合っていた。