「ふーん……あーもう、良いやっ」

美紗がそう言って、髪を弄るのを止めた。

「やれやれ、世の中どこも不景気ねぇー」

「あはは、なんか美紗がオッさんくさーい」

私がそう笑うと、茜も笑いながら続いた。

「ほんまやなー。美紗さん、今のはオッさんくさかったでー」

「悪かったわね。どーせ、私はオッさんくさーい女ですよ」

拗ねたように言う美紗に、私は鼻を近付け、臭いを嗅いだ。

「うわっ!? なによいきなり!」

そう言って美紗が少し飛び退くようにして見せてから、私は離れて茜に耳打ちをした。

「少し加齢臭が……」

「あやー、手遅れやったんなー」

「ふふふっ、聞こえてるぞっ? そこの仲良し死にたい二人組ーっ」

聞こるようにしたので当たり前だが、私たちの会話を聞き付けて、美紗は微笑みながら怒っていた。

あはははっ、と笑いながら私と茜は走って前に出た。

ふざけた感じの怒鳴り声で後ろから美紗が追って来た。

雨降りの中、バカなことをしている私たち三人。

私と美紗は幼稚園からずっと一緒だが、私たちと茜は大学からの友達だ。

だけど、すごく仲が良い。

まるで、茜も私たちとずっと一緒にいたような気がする程に仲良しだ。

茜に出逢って、友情に時間はあまり関係無いと知った。

走る私の顔に、風と交ざった雨粒が軽く当たって心地良い。

笑い合ってる私たちは、きっと親友になれている。

時間が止まれば良い。

何度目かわからないけれど、私はそう思った。

そんな気持ち良い雨振りの日だった。