いままではけっこう熱もあったんだろうけど、大丈夫ばっかりで本音は言わなかった。
これから、俺等のなかでしっかり言わせていけばいいよな
…玲菜も
ここはお前らの居場所だから。
玲菜はさっき、龍を拒絶した。
なんでだ??
あんなに安心し切っていたのに
「…あのね、玲菜のことなんだけど」
考えていた俺は悠莉の声で現実に戻された。
まだ朔に寄っかかってつらそうにしているが話してくれるらしい。
「玲菜は、過去にトラウマがあるの」
「トラウマ??」
「うん、私と出会う前の」
「それって、俺等が聞いてもいいのか??」
「すべては話さない。玲菜が自分で乗り越えるべきだとおもうから」
少しだけでも、知っていけるんだからいいよな
悠莉が言うんだからきっと自分で乗り越えるべきなんだ
「…玲菜は養子なの」
「養子??」
俺が聞き返すとこくんとうなずく悠莉。
「それで、前の家族には病気のこともあったりしてすごくうっとうしがられてたみたいなの」
「…」
「だから、今だに調子が悪いときや情緒が不安定な時にため息をつかれたり、お前って言われたりすると思い出してかさねちゃうみたい」
「俺…嫌われたか…??」
「大丈夫だとおもうよ。だけど…」
「だけど??」
悠莉はしばらく…といっても10秒くらいだが黙っていた
「…病気のことが面倒くさいとか、同情で関わっているなら、玲菜に…私たちにかかわらないで」
「悠莉ちゃん…」
「これ以上、恐怖をうえつけたくないの!!玲菜は十分傷ついていたし、頑張ってきたの!!」
最後には立ちあがって叫ぶようにいった。
「悠莉。俺等はそんなことおもってねぇよ」
龍が話し、俺等も頷いた。
「あ、りがと…っ」
安心したのか力が抜けて倒れそうになったところを朔が抱きとめた。
「ごめッ…」
「いいから。このままおりな」
「ん…」
最初は謝っていたものの、もうそんな気力は残っていないのか大人しく朔に寄りかかった
それから、だれも話さず、何分かすぎたとき…
「佐々木さーん。佐々木悠莉さーん」
悠莉が看護師さんによばれた
目を閉じていた悠莉はうっすらと目をひらいた。
だけど、力が入らないのか立ち上がろうとはしなかった
息も浅く、うっすらと汗をかいている。
朔はそんな悠莉を心配そうに見つめたあと、抱き上げて診察室に入っていった。
残された俺等は受付の人に玲菜の病室を聞き、玲菜のところへと向かった。
診察-しんさつ- (名)
病気の有無や症状などを判断するために、医師が患者のからだを調べたり、質問したりすること。
_
なさけないな…
入学早々、疲れただけででる熱。
だんだんと近くなってくる診察室をぼんやりと見ながら朔によりかかっている私。
こんなことしてもらって、悪いなとかおもいながらも、力がはいってくれない体。
すべてがなさけない。
コンコン
「どうぞー」
「しつれいします」
ガラガラ
熱があって、しんどくても、拒否してしまう診察。
朔がドアを開けた瞬間、私は朔の胸に顔をうずめた。
「悠莉ちゃん??」
朔が不思議そうに私をよぶけど、それを無視してもっと強く抱きついた。
それを見た先生が説明するのが聞こえた。
「悠莉ちゃん、ホントに病院嫌いなんだよ」
「そう、なんですか」
ひかれたかなとか、子供っぽいって思われたかなとか考えながらも、だきついていた。
すると、今までわたしの腰に回っていた朔の手が背中に移動してきて、ポンポンと一定のリズムを刻みはじめた。
「大丈夫だよ、悠莉ちゃん。俺がいるだろ??」
耳元で聞こえた声に、すごく安心した。
「…ん」
私の小さな返事をきいた先生は驚いていたけど、すぐに診察の準備をはじめた。
「よし、はい、前あけてねー」
そういわれて、あげようとしない私をチラリと見た朔は、素早く私のシャツを開けた。
「さ、く…」
「ほら、さっさと終わらせねーと…俺が…ゃ…んだょ」
「え??」
何か言ってるのは分かったけど、よく聞こえなかった。
「んでもねぇよ」
聞き返してみるけど、やっぱりこたえてくれなかった。
「はい、深呼吸してー」
先生にいわれた通りにしていく…
「よし、いいよ」
そういわれて服をなおす。
「んー、結果なんだけど…」
「…入院、ですか??」
「うん、そうしてくれるとありがたいかな…」
「…たか…」
「ん??どうした??」
「いえ、分かりました」
「よし、じゃぁ…玲菜ちゃんと同じ部屋でいいかな??」
「はい」
結局、入院。
入学早々、入院なんて、これから3年間やっていけるのかな…
「悠莉ちゃん??」
「…」
よく考えたら、朔等とも今日あったばっかりなんだ。
なんか、ずっと一緒にいた気分。
やっぱり、病弱なんて面倒くさいかな??
さっき、啖呵きったけど、あれは玲菜のためじゃない。
私がもう傷つきたくないから。
こんな身体のせいで友達が離れていくなんてもういやなんだ。
「悠莉ちゃん!!」
「…はい!!」
相当考え込んでいたのか、いつのまにか朔と先生が心配そうに私を覗きこんでいた。
「あ…ごめんなさい」
「…病室は507だよ」
「はい、分かりました」
気づいたのかな??
なにもいわなかったけど
でも、いまはそれがありがたかった
いまは何も聞かず、そっとしておいて欲しかった。
それから最後に、先生はお母さんに連絡しておくからといって診察を終わった。
「悠莉ちゃん、立てる??」
「だいじょ、ぶ…」
「大丈夫じゃないでしょ」
ふわっ
急に体がういた。
「ちょっ、と…」
「だまって」
「…朔」
「なに??」
「私のこと嫌い??もう、いやだ??」
少しおこっているような、呆れているような朔に不安になって聞いた
なのに、朔は一瞬あしを止めただけでまた何も言わず歩き始めた
「さ、く…??」
おもわず涙があふれる
私、何でこんなに胸が痛いの??
何でこんなに朔に嫌われるのがこわいの??
…この気持ちはなに…??